【書評】"リー・クアンユー世界を語る"

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【書評】”リー・クアンユー世界を語る” シンガポールは、なぜそんなに発展しているのか。

以前、シンガポールに旅行に行った。

シンガポールに向かう飛行機の中、となりに座った女性が黄色い表紙の本を読んでいた。

それはリー・クアンユーに関する本だった。

都市の中に作られた未来的な庭園、ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ。
晩年のリー・クアンユーは緑化政策に力を入れていた。

シンガポールを訪れて

シンガポールを訪れると、とても発展していることに驚く。
東南アジアの他の国との違いは何なのか、ということを考えざるを得ない。

シンガポールは、もともとこれほど豊かだったわけではなくて、独立当初は他の東南アジアの国同様、貧しい国だった。
面積は東京23区ほどで、資源はなく、民族的多様性という難しさも抱えていた。

それが、今やは世界有数の豊かな国となり、シンガポール国民の所得は、大半のアメリカ人をしのぐようになっている。

この発展はシンガポール建国の父と呼ばれる、初代首相リー・クアンユーの手腕によるところが大きいのではないかといわれている。

巨大噴水「ファウンテイン・オブ・ウェルス」。
周囲には、人の指となる5つのビルディングを配置し、手のひらの位置にこの噴水がたっている。
風水に基いた設計。

ということで、せっかくだしと思いkindleでリー・クアンユーの本を1冊買って読んでみた。

”リー・クアンユー世界を語る”

リー・クアンユー、世界を語る

グラハム・アリソン

リー・クアンユー、世界を語る

この本は、世界情勢について、リー・クアンユーのインタビューをまとめたものである。

この本の中からシンガポールの発展につながったと思われるところを、私なりにまとめてみたいと思う。

“リー・クアンユー世界を語る”を読んで

①人材

リー・クアンユーは、資源がない中で国が発展するには優秀な人材を集めることが、なによりも重要であると考えた。
街の美化を行い、インフラを整え、制度をクリーンにし、法を整備、英語を公用語として海外からの人材、投資を呼び込んだ。

また、人材育成のため教育に力をいれた。

リー・クアンユーは人の根本的に悪であると考えているようである。

政治がうまく機能するためには、どのような政治体制をとるかより、善良で優秀な人間の関与が大切であると考え、経済躍進には、革新、技術が必要であり、それを生み出すのは人材、またその多様性を受け入れることであると考えた。

わが国には、人材が必要だ。我が国は、人材を受け入れる。
それが我々の特色といえるだろう。

よい政府をつくるには、政府に関与する人材によい人間を選ぶしかない。

国家の発展を目指すなら将来性のある人材を育てるしかない。

経済が躍進するのは、新しい知識、新しい科学技術の発見、起業家が市場にもたらす革新性があってこそだ。

教育や訓練を通じて自分たちを向上させ、生産性を向上させようという意識を高めないかぎり、自たちの未来は保証されない。

リー・クアンユー

シンガポールは、中国系、インド系、マレー系などからなる多民族国家であるが、『文明の衝突』の著者である サミュエル・ハンティントンは、シンガポールを儒教に基づいた文明圏・中華文明 に分類している。

②英語

シンガポールは、英語を第一言語とし母国語を第二言語としている。
英語を公用語とすることにより、ビジネスがしやすい環境をつくった。

また、英語をマスターすることは英語の思考法にも通じると述べているところが興味深い。

ただ、英語を第一言語とする取り組みは、はじめは教育を英語と母国語どちらを選んでもよいという選択肢を提示して、30年かけて行ったとインタビューで述べられている。

成功したければ、英語をマスターすべきだ。英語は、ビジネス、科学、外交、研究といった分野で必須の言語だからだ。

我々には、英語が世界やインターネットの共通言語である時代に、国民がみな英語教育を受けているという強みがある。

(英語を第1言語とした理由は)世界言語という面だけでなく、英語の思考法によって、新しい発見や発明につながる効用をも考慮し、世界に向けて門戸を開放するためだ。

リー・クアンユー

リーは、言語を覚えることは、コミュニケーションの道具となるだけではなく、その言葉を話す人の思想体系、考え方のフレームワークを理解できると考えていました。
若いころ、業務で多忙な中でも、中国語のレッスンを受けていたようです。

リーの英語は下記で聞くことができます。

リーダーらしい熱のこもった、とてもパワフルな英語を話します。

③科学技術

リー・クアンユーは、経済、生活スタイルが発展させるのは、科学技術であると考えており、それらは宗教の教義やイデオロギーより社会に与える影響は大きいと考えているようである。

シンガポールは早い段階から情報化施策に取り組んでおり、世界でも最先端のIT国家となっている。

(ヒンドゥー教や中国の儒教や共産主義、日本の神道)それらの信者は、進歩するためには、科学技術を習得しないといけないとわかっている。

テクノロジーによって、我々の経済や生活スタイルは発展し、変わりつづけるからだ。

技術の進歩についていけない国々は、敗者になる。

リー・クアンユー

さいごに

今回、シンガポールが発展した理由として以上の3つを考えた。

この本を読むと、リーは、現実主義でその時代、時代にあった最善の政策を考え、実行してきたことがわかる。

ただ一方で、シンガポールは事実上一党独裁であり、言論の自由がなく、「明るい北朝鮮」などとも揶揄されているようである。

民主主義ではないとアメリカなどから非難されることもあるようであるが、リーは民主主義について以下のように述べている。

私は民主主義がかならずしも発展につながるとは思っていない。
むしろ、国家の発展に必要なのは民主主義ではなく、規律だと思っている。

リー・クアンユー


発展途上の国が短期間のうちに躍進するためには、独裁にも近い強力なリーダーシップが必要だということだろうか。
ただ、間違いなくそのリーダーは優秀でなくてはいけないだろうけど。

経済的な豊かさはすべてではないけれど、他のアジアの国に比べてシンガポールの豊かさを見ると、彼のやってきたことを否定することはできないように思う。